【第二十一話】強行突破

「あのドラムでは商品にならん!」

「彼にはレコーディングは無理…」

「打ち込みでいくけどいいか?」

 

プロデューサーの丸尾さんの厳しい言葉が、

僕たちに向けられました。

 

「はい。それでお願いします」

 

僕たちは即答しました。

 

ドラムの戒くんには悪いけれど…

 

今からドラムスクールに通わせて、

基本から学ぶ時間がありませんから。

 

それに加えてさらに、丸尾さんは

「ヴォーカルにはボイトレが必要やな」

「今のままじゃ厳しい…」

 

そのような、前置きがありつつも

フルアルバムのレコーディングが開始されたのでした。

 

信じるものは自分の力のみ

事務所の一室で繰り返されるレコーディング作業…

 

フルアルバム完成へ向けて、

僕ともう一人のギターの鏡影くんは

毎週のように大阪南船場へ足を運んでいました。

 

ライヴ活動をしながらのレコーディング作業でした。

 

曲の土台であるドラムパートは僕と鏡影くんが中心となって作り、

丸尾さんがそれを調整していくといった感じです。

 

ベースはサポートのK君でしたが、

彼が事務所に来れないときは

ギターの鏡影くんが弾きました。

 

僕と鏡影くんのギターパートに関しては、

予想以上に良い感じで録音されていったのを覚えてます。

 

そんな感じで、

収録予定の曲は少しづつ形となりつつあったのですが…

 

いつまでたっても、

肝心のヴォーカルが録音されないのです。

 

「完成するのか?」

 

僕に疑問がよぎりますが…

 

自分のことで精一杯でしたし、

ライヴ予定も次から次へとありましたので、

あまり深くは考えませんでした、僕は。

 

それに加えて、

レコーディングが進むにつれて、色々問題が…

 

ドラムの戒くんの脱退、

サポートベースのK君の脱退、

 

バンドは3人になってしまいます。

 

ヴォーカルの緋咲くん、

ギターの鏡影くん、

ギターの僕。

 

ライヴはドラム&ベースのオケをバックにこなしていくことになっていました。

 

しかし…

レコーディング進行状況とは反対に

ライヴ活動は順調でした。

 

演奏面、サウンド面、

これまでにないくらいくらいに

成長しています。

 

しかも、大阪を拠点にしながらも、

神戸でのライヴも増えてきました。

 

そして、ある日…

 

名古屋の音楽事務所のイベント参加が

予定に組まれることに。

 

「頑張って来いよ」

丸尾さんは僕たちに明るい表情でそう言いましたが。

 

僕はチケット売り上げなんて無視w

 

自腹を切ってでもやりますてな感じでした。

 

イベント参加ということもあり、

ノルマもありませんでしたが…

 

僕にとっては、

集客よりもステージをこなすことが最優先。

 

自分たちの音楽を表現して、

そこからお客さんそれぞれにとって

何かを感じていただけることが重要でした。

 

そんなわけで僕たちは朝早くから鏡影くんの車で

名古屋まで向かいます。

 

名古屋市内に到着後、

ファーストフード店へ…

 

フツーに注文したのですが、

フツー以上の対応に驚きました!

 

「今日はライヴですか?頑張ってくださいね」

と店員さんが、僕たちに言ってくれたのです!

 

僕たちが一目でバンドマンだと分かるのは

わかるのですが、その一言ってうれしいですよね?

 

名古屋、来て良かったw

 

そして、

ライヴハウス到着!

 

「はじめまして、大阪から来ましたWALPURGISです」

 

ライヴハウスの人に挨拶。

にっこりと挨拶を返してくれました。

 

楽屋は快適でした。

 

しかし、

何よりも驚いたのが…

ジュースまで運んできてくれるのですよね!

 

こんな対偶を受けたのは初めてです。

 

名古屋大好きw

 

そしてライヴ本番!

 

いつもどおりの

自分たちのステージを繰り広げていきます。

 

感想は?

 

お客さんは熱心に聴いてくれている感じでした。

大阪以上にw

 

しかも、あとから知った話なのですが

地元名古屋のお客さんが僕たちのバンドから

二枚チケットを買ってくれていたのです。

 

正直言ってその時のライヴのチケット売り上げは

その二枚だけですがw

 

しかし、

チケット売り上げ二枚にも関わらず、

プロデューサーの丸尾さんに褒められたのを覚えてます。

 

「地元の人間が買ってくれたんやな、すごいな!」

てな感じで。

 

自分たちの音楽を自信を持って突き進めば

それに共感してくれるお客さんもいるのです。

 

名古屋、最高!

(゚д゚)!

 

しかし…

 

ライヴで表現して突き進むのと

作品を完成させるのは違うのです。

 

フルアルバムを商品として完成させるのは

簡単なことではないのですよね。

 

そこにはお客さんの優しさなどありません。

自分自身と向き合う厳しさがあるのですから…

 

実力不足でバンドを去っていったドラム。

 

バンドの活動ペースについてこれなく、

脱退したサポートベース。

 

そんなわけで、

3人になったバンド…

 

ライヴ活動に関しては、

順調にこなしていくわけですが…

 

あとがき

正直いって、今でもあの時の状況になれば

どうすれば良いのか分かりません、僕は。

 

バンドの状況は最高になりつつあるのに

次々とメンバーが去り、それでも強行突破していった感じです。

 

残ったメンバーでその先にある

さらなる進化を求めて前進していく…

 

はたしてそれはバンドといえるのか?

 

「バンドは皆で力を合わせていくもの」

「力のない者が去っていくのは仕方がない」

 

相反する二つの選択肢…

 

僕は後者を選びました。

 

最後に…

 

結局のところ

壁をぶち破るのは各個人の行動力であり

そこからはじめて力を合わせるのです。

 

だからこそ、

バンド活動は難しいのです。

 

何事も土台があってはじめて

その結果としてあらわれてくるのだと、

そう思います、僕は。

 

もしもあなたがバンド初心者さんなら、

この記事を読んで

「( ´_ゝ`)フーン、そんな感じだったんだ」

と、思っていただけらば…

幸いです。

ペコリ(o_ _)o))

最後まで読んでいただき
ありがとうございました