【第十九話】信念

「彼女がいるメンバーは別れろ!」

「友人と遊びに行くな!」

 

なんじゃそれ?

 

…それに近いことを当時の僕は

メンバーに強要したのでした。

 

年末のスタジオ終了後、ミーティング。

「来年の抱負」

として、バンドは

ある程度の「結果を出す」ことを目標に。

 

それが出来なければ、バンドを解散させる。

 

しかも、僕は

メンバーに一年の課題を与えます。

 

ヴォーカルは100曲分の歌詞を書く

僕ともう一人のギターは50曲を作る

ドラムには50回分の練習を録音する

 

そんな感じでバンドは、

新たなる一年の幕開けとなります。

 

鬼となり突き進む

結成からかなりの期間が経っていました。

 

準備期間を経て地元でのライヴ、

そしてさらなる演奏力強化、

大阪拠点で定期的にライヴ活動。

 

時間はかかりましたが、

バンドは僕のイメージどおりに進展。

 

ベースの真くんはすでに脱退しており、

サポートメンバーとしてK君が手伝ってくれてました。

 

ライヴは定期的に行っていましたが…

そこから先はどうすれば良いのか?

 

曲の多様性で変化していく?

バンドイメージをごっそり変える?

 

僕は深く一点追求していくことにしました。

 

バンドのカラーは変えることなく、

さらに完成度を高めるのです。

 

まずは精神論…

 

バンド以外その他を捨てよ!

ずっととは言わない、

せめて一年だけでも。

 

彼女と別れろとか友人と遊ぶなとか

までは言いませんでしたが、

一年間は会うな、と言いました。

 

「だらけている…」

 

バンドは惰性で活動、

現状に満足しているような

そのように感じつつありました。

 

その空気を打破するためには

僕が鬼になるしかなかった。

 

そして、

自分たちのバンドの音楽を深く追求していく!

 

そんな感じで、

ライヴ活動もこなしながら、

ヴォーカルの緋咲くんも歌詞を書いたり

僕ともう一人のギターの鏡影くんも曲を

作っていくことに。

 

そして、ギターの鏡影くんが所有する録音機材で

さらなる新音源もレコーディング、完成させました。

 

これまでにないくらいの満足度でした…

 

WALPURGIS『tief』

 

アルバムタイトルは「tief」、

ドイツ語で「深さ」の意味。

 

音楽性においては、

広げていくよりも

深く追求していく

バンドの方向性をも表していました。

 

そして…

その音源が完成した数日後のことです。

 

僕のケイタイが鳴りました!

 

旧友のあつし君?

 

「久しぶり!オムニバス参加せーへん?」

「もしよかったら、事務所の専務に今度会いに来て」

 

彼は僕がけんじ君とバンドを組んでいた頃に

知り合ったヴォーカルでした。

 

あつし君は、とある音楽事務所の

オムニバスCDに参加するとのことです。

 

そして僕にも誘いの電話をしたみたいでした。

 

正直いって当時の僕には、

オムニバスなんかどーでもよかったw

自主制作で突き進むつもりでしたから。

 

でも、緋咲くんは前向きでした。

「ぜひ参加したい!」

てな感じで。

 

音楽事務所からオムニバスを出して

イベントにも出演できるから。

それが彼の「理由」だったのです。

 

とりあえず僕は、

その専務とやらに会うために、

大阪南船場へと向かいました。

 

僕はあつし君と再会して、

一緒に音楽事務所へ話を聞くために向かいます。

 

昔話に花を咲かせながら夜の道を歩く…

 

あつし君は

「あの頃は楽しかった」と言って、

僕に再会して本当に喜んでました。

 

そして、事務所前に到着、

専務さんが出迎えてくれます。

 

彼は肩書は専務ですがプロデューサーで

レコーディングも担当しているとのことです。

 

名前を丸尾さん(仮名)といいました。

 

僕は自分の名刺と、名刺代わりの

先日完成した新音源を差し出しました。

 

丸尾さんは、その場で聴いてくれました。

 

そして一言、

「君たちの音楽が悪いという意味ではなく、

サウンド面でのクオリティーは低いなあ」

 

当時の僕は音楽性の面とか

バンドの方向性に関しては

絶対的な自信があり、

それに関しては特に何も言われなかったです。

 

しかし、

音源の音質面に加えて

ドラムが弱い、ヴォーカルが弱い、

と言われたのを覚えてます。

 

その後も時間の許す限り色々お話させていただきました。

 

その結果…

オムニバス参加することに。

 

僕にとってはオムニバス参加が目的ではありませんでした。

 

「その先」を見据えたうえでの判断だったのです…

 

あとがき

当時の僕の判断力と行動力は

神がかっているというよりも、

鬼となって突き進んでいるようでした。

 

これまで培ってきた経験と知識、全てが

かみ合っていくようにバンドは前進、

成長をしていってましたからね。

 

「天狗になる」

という言葉がありますが…

当時の僕は絶対的な自信があったのです。

 

「僕を信じてついてきてほしい」

メンバーにそう言って、

自信満々でバンドのかじ取りをしていくことになってました。

 

そして、

偶然にも音楽事務所と関りをもっていくことになったのです。

 

今から思い返せば、

それはバンドのさらなる成長と、

メンバーの真価を問われる試練でした。

 

最後に…

 

いくら、自分自身に自信があっても、

メンバー全員の協力と信頼関係があってこそ、

バンドといえます。

 

そして…

ひとそれぞれ温度差があるのも事実です。

「今現在、楽しくライヴ出来てるし」

「現状維持で良いじゃん?」

「これ以上、上を目指す必要があるの?」

そう思うメンバーもいるも知れない。

 

バンドは前進すればするほど、

そこには正解のない世界が待ち受けている…

 

だからこそ、

自分自身の信念が問われるのですよね。

 

バンド活動をしていて音楽事務所と関わることもありますが…

 

もしも、あなたがバンド初心者なら

音楽事務所に所属したいですか?

 

より多くの人に自分たちのバンドを知ってもらう、

とても良いことだと思います、もちろん。

 

でもその前に、自分の信念は

それ以上に大切だと、今でも思います。

ペコリ(o_ _)o))

最後まで読んでいただき
ありがとうございました